W・D・レイミー著
松田出訳

 


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I. サムエルの誕生と支配(第一サムエル記1-7)

最初の大きなストーリーのまとまり(概略1)はサムエルについての話で始まる。サムエルは、ダビデの王座の確立に重要な役割をはたす預言者だ。この箇所はサムエルの誕生で始まり、サムエルの支配について要約して終わる。「サムエルは、一生の間、イスラエルをさばいた(7:15-17)」。この箇所は、歴史の順に並べられた七つの部分からなっている。その構造は対称性を持ち、主がサムエルを呼ぶ場面が中心に置かれている。

■概略1 サムエルの誕生と支配(1-7)

A 導入:サムエルの誕生と主への生涯献身(1:1-2:11)
 −ラマに生まれる
 −サムエルの家族、毎年ラマからシロに上る
 −エルカナ、ラマの家に帰る


  B
エリのよこしまな息子たち、天幕で主をさげすむ(2:12-26)
   −イスラエルの祭司が主の天幕とささげ物を侮る

    C エリの息子たちが一日のうちに死ぬという預言(2:27-3:1a)

      X サムエルが主に呼ばれる(3:1b-4:1a)

    C'
エリの息子たちについての預言が成就し彼らは死ぬ(4:1b-22)

  B'
契約の箱の放浪:ペリシテ人が主の契約の箱を敬う(5:1-7:1)
   −ペリシテ人の祭司が契約の箱を敬っていけにえをささげる

A'結び:サムエルの勝利とイスラエルにおける支配の生涯(7:2-17)
 −サムエル、ラマに住む
 −サムエル、各地を行きめぐってラマにS戻る
 −サムエルは常にラマに戻る

第一サムエル記1-7をもっと細かく分けても同じ構造になる。たとえば、サムエル誕生のストーリーがそうだ(概略1.1)。サムエルの誕生は、主の導きが逆転することを強調している。「逆転」はサムエル記の基本テーマだ。サムエルの誕生がストーリーの中心に置かれていることに注目しよう。

■概略1.1 サムエルの誕生(第一サムエル記1:1-2:11)

A エルカナと家族、毎年ラマからシロへ上る(1:1-8)
  B ハンナの悲しみの祈り(1:9-11)
    C ハンナとエリの悲しみの会話(1:12-18)
      X サムエルの誕生(1:19-23)
    C'ハンナとエリの喜びの会話(1:24-28)
  B'ハンナの喜びの祈り(2:1-10)
A'エルカナ、ラマの家に帰るがサムエルはシロにとどまる(2:11)

次はエリのよこしまな息子たちのストーリーである。サムエルと彼らとの対比が強調される(概略1.2)。

■概略1.2 エリのよこしまな息子たち(第一サムエル記2:12-26)

A 導入:エリの息子たちは主を知らない(2:12)
  B エリの息子たちの悪行(2:13-17)
    C サムエル、主に仕える(2:18)
      X ハンナ、さらに子を身ごもる(2:19-21b)
    C'サムエル、主の前に成長する(2:21c)
  B'エリの息子たちの悪行(2:22-25)
A'結び:サムエル、主の好意を受けて成長する(2:26)

構造を見ているとき、現在見ている構造を包み込むような、より大きな構造があることに気付くことがある。サムエル記では、隣り合った2つのストーリーをつなぎ合わせる構造が見つかることが多い。このような構造は、一方が土台、もう一方が住居部分という建物の構造にたとえることができるだろう。

次に第一サムエル記2:1-36、3:1-4:1a、4:1b-18に現れた緻密な構造を見てみよう。

■概略1.3 第一サムエル記2:1-36の文学的一貫性

A ハンナの預言:主に油注がれた者に言及して終わる(2:1-10)
  B 主の前でのサムエルの働き(2:11)
    C エリの息子たちの罪(2:12-17)
      D 主の前でのサムエルの働き(2:18-19)
        X エリ、サムエルの両親を祝福する(2:20-21a)
      D'主の前でのサムエルの成長(2:21b)
    C'エリの息子たちの罪(2:22-25)
  B'主の前でのサムエルの成長(2:26)
A'神の人の預言:主に油注がれた者に言及して終わる(2:27-36)

■概略1.4 第一サムエル記3:1-4:1aの文学的一貫性

A サムエル、しもべとして主の前でエリに仕える(1a)
  B 主のことばはまれにしかない(1b-c)
    C エリの目がかすんで見えなくなる(2)
      D 主がサムエルを3度呼ぶ(3-9)
         a サムエルは主の宮で寝ていた(3)
           b 主の第1の呼びかけ(4-5)
             c 主の第2の呼びかけ(6)
               x サムエルはまだ、主を知らない(7)
             c'主の第3の呼びかけ(8)
           b'エリ、サムエルに答える方法を教える(9a)
         a'サムエル、自分の所で寝る(9b)
        X 主がサムエルに現れる(10-15)
      D'エリ、サムエルを呼ぶ(16-18)
         a サムエル、エリに啓示を告げるのを恐れる(15c-16)
           b 「主の言葉はどうであったか?」(17a)
             c 「私に隠さないでくれ!」(17b)
               x 「神がおまえを幾重にも罰せられるように」(17c)
             c'「おまえが一つでも隠すなら」(17d)
           b'「主がお告げになったことばのうち」(17e)
         a'サムエル、エリにすべてを告げる(18)
        C'サムエルは成長した(19a)
    B'主のことばが再び与えられる(19b-21)
A'預言者サムエルのことばが全イスラエルに行き渡る(4:1a)

4:1b-18の前に第一サムエル記4:1b-6:19を見てみよう。契約の箱はイスラエルに対する神の臨在の象徴である。その臨在の力のすさまじさにペリシテ人もイスラエル人も押しつぶされてしまう。

■概略1.5 主の箱の臨在(第一サムエル記4:1-6:19)

A 約四千人のイスラエル人の戦死(4:1b-2)
  B 敗北:神の箱奪われる:エリの息子たちの死(4:5-11)
    C 神の箱が奪われた結末:エリ、首を折って死ぬ(4:12-22)
    C'神の箱を奪った結末:ダゴン、首を切られて「死ぬ」(5:1-12)
  B'信仰の勝利:神の箱が戻る(6:1-18)
A'多数のイスラエル人が主に打たれて死ぬ(6:19)

■概略1.5.1 第一サムエル記4:1b-18の文学的一貫性

導入:イスラエルの敗北:四千人が戦死(1b-2)

A 人々陣営に戻る:「シロから契約の箱を持ってこよう」(3)
  B ケルビムに座しておられる主の契約の箱がシロから到着する
   エリの息子たちの名が言及される(4)
    C イスラエルの大歓声(5)
      D ペリシテ人いぶかる「あの大歓声は何だろう」(6a)
        E ペリシテ人、主の契約の箱のことを知る:恐れ(6b)
          F ペリシテ人の長い語り:自らを鼓舞する(7-9)
            G イスラエルの損失とストーリーの一区切りの終わり
             ホフニとピネハスの死が特記される(10-11)
A'ベニヤミン人、戦場からシロに走ってくる(12)
  B'エリがシロの道のそばの席で神の箱を心配して見張る(13a)
    C'知らせの者、敗戦を知らせ、町中こぞって泣き叫ぶ(13b)
      D'エリ、泣き叫ぶ声を聞く「この騒々しい声は何だ」(14a)
        E'知らせの者、大急ぎでエリに知らせる(14b)
          F'エリの年齢と盲目さ(15)
            G'知らせの者、言葉どおりすべてを告げる
             「ホフニとピネハスと神の箱が失われた」(16-17)

結び:エリの死とイスラエルをさばいた期間(18)

 
序文
サムエルの誕生と支配(第一サムエル記1-7)
サウルの支配・罪・神の拒絶(第一サムエル記8-15)
サウルの王宮におけるダビデ(第一サムエル記16-20)
ダビデの逃亡(第一サムエル記21-31)
ダビデの王座の確立とサウルの家族への誠実(第二サムエル記1-8)
ダビデの罪とその結末(第二サムエル記9-20)
ダビデの最晩年とソロモンの王位継承(第二サムエル記21-第一列王記2)
 
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