Subject: ヤコブの手紙「舌を制御する完全な人」 |
From: Shinya Daniel Kanno |
Date: 2010/03/26 20:09 |
To: Saiwainet |
「舌を制御する完全な人」 菅野審也 2010.03.26 ヤコブの手紙で、舌について取り扱われていることは、多くの人が知っているこ とだろう。その話の中で、「ことばで失敗しない人がいるなら、その人はからだ 全体を制御できる完全な人である」(3:2)ということが言われているおり、舌を 正しく制御するようにというヤコブの兄弟たちに対する命令がある。では、ヤコ ブの手紙全体におけるこの命令の位置づけ、またこの命令の意味は何なのだろうか。 ヤコブの手紙は全体を1:2-27、2:1-26、3:1-4:10、4:11-5:20の四つに分けるこ とができ、知恵と律法というテーマが二回繰り返される形になっている。最初と 三つ目の段落では、知恵がテーマとなっており、二つ目と四つ目の段落では、律 法がテーマとなっている。律法がテーマとなっている二つの段落においては、そ れぞれ大きな違いがあり、特に最初の方は、対神様、すなわち、神様に対する信 仰について話されている。最後の段落は、対兄弟ということで、「互いに」とい うことばが繰り返されている。最後の段落においては、対兄弟であるということ が非常にはっきりとしており、その段落の概略において、「互いに悪口を言い 合ってはいけません」(4:11)という言い方と、「互いにつぶやき合ってはいけま せん」(5:9)という言い方がそれぞれ出だしとなっている。 舌を制御することについては、一段落目と三段落目で、「聞くこと」と並行して 話されており、これらの段落からは、聞くことや舌の話を通して、上からの知 恵、また上からのことばについて教えられている。この手紙を送られているユダ ヤ人たちは苦しい状態にあり、何か問題となっていることがあるが、その問題と は、「人の欲による誘惑」と「悪魔による敵対心」の二つであると言われてい る。ヤコブは問題の解決として、ユダヤ人たちに、誘惑に対しては完全な者とな ること、敵対心に対しては平和をつくることを命じている。では、そのような問 題に直面しているユダヤ人たちにとって、舌を制御するとはどのような意味を持 つのだろうか。 ヤコブの手紙の中では、忍耐の模範として、ヨブが具体的な人物としてあげられ ている。 そのヨブの人生において、彼が舌を制御したことについてはっきりとヨブ記2章 10節に書かれている。その箇所で、ヨブの妻は、彼に対して「神をのろって死に なさい」ということを言ったが、ヨブはこのようになっても、罪を犯すようなこ とは口にしなかったということが言われている。ヨブはユダヤ人たちと同じよう に苦しい状態に置かれても、口を制し、かえって自分の友人たちに対して正しく 答えた。 このようなわけで、ヨブの人生からも教えられるように、舌を制御するというこ とは、苦しみの中にあって忍耐するということの具体的なあらわれであることが わかる。すなわち、その舌をもって「主であり父である方をほめたたえる」とい うこと(3:9)、これがからだ全体をりっぱに制御できる完全な人としての在り方 である。-- Shinya Daniel@KannoFamily mailto:+shinya@kanno.com :)