Subject:
ヘブル:「シャレムの王メルキゼデク」
From:
Miwaza Jemimah
Date:
2010/04/28 8:27
To:
saiwainet@yahoogroups.jp

5章6節に登場するメルキゼデクという人物だが、彼についてはヘブル人への手紙では引き続き、6章から7章にも書かれている。実は、この人はこの書物に8回も出てくるのにも関わらず、旧約聖書では創世記14章の彼が登場するストーリーの一度以外には、聖書に書かれていない、というある種、謎の人物なのだ。詩篇110篇4節にも彼の名前は出てくるのだが、「あなたは、メルキゼデクの例にならい、とこしえに祭司である。」という文脈の中であり、実際に彼がどのような人物であったのか等ははっきりしない。ただ、詩篇110篇においてもヘブル人への手紙においても「メルキゼデクに等しい祭司」という言い方が繰り返されており、実に6回もその言い方がでてくるのだから、彼が大切な登場人物の一人である事は明白である。では、メルキゼデクとは誰なのか?彼は聖書全体のストーリーにおいてどのような役割を果たすものなのか、ヘブル書を通して分析してみる事とする。

メルキゼデクが最初に登場するのは創世記14章18節であり、これが唯一、実際にメルキゼデクが登場するストーリーである。アブラハムが捕われた甥のロトとその家族を救い出すために、国々の王たちと戦い勝利したとき、シャレムの王メルキゼデクの元へ行き、彼から祝福を受けた。そして、アブラハムも自分のすべてのものから十分の一をメルキゼデクにささげた。このストーリーにおいて興味深いのは、ここでアブラハムを祝福するためにメルキゼデクが「パンとぶどう酒」を持ってきた、と明らかに聖餐式を連想させることが書かれている、ということである。アブラハムは十分の一の献金を捧げたばかりでなく、パンとぶどう酒という聖餐式の食事をもって祝福を受けたのである。

この箇所から明らかになるのは、彼がシャレムという場所の王であったということだ。この場所については、ほとんどのユダヤ人の研究者たちが「エルサレム」のことではないかと推測している。「シャレム」という場所は、聖書にもう一度だけ出てくる。詩篇76篇2節で「シャレム」に神の仮庵があった、と書かれている箇所である(「神の仮庵はシャレムにあり、その住まいはシオンにある。」)。この箇所も「シャレム」が「エルサレム」であると言われる要因の一つではないか、と思われる。