Subject:
ヴェニスの商人・1/17(金)のまとめ
From:
"近野聡子" <konnosatoko@nifty.com>
Date:
2003/01/21 7:38
To:
"さいわいネット" <saiwainet@egroups.co.jp>

おはようございます。聡子です。
先週の金曜日の授業の、まとめを送ります。

「ヴェニスの商人/ウイリアム・シェイクスピア」

〈物語の背景〉
イタリアのお話から題材を採っている。

中世期、教会が、お金に利息を付けて貸すことを、禁じていたため、
金融業は社会的にも、人道的にも”罪悪”である、と見なされていた。

しかし、ユダヤ人は、ローマ・カソリックに属してはおらず、故に、
高利貸しも、禁止の対象にはならなかった。

*ユダヤ人は外国人であったため、職業選択の幅がなかったことも、  
 原因のひとつである。

〈物語の主題〉
その1、シャイロックのアントーニオに対する憎しみ
その2、ポーシャとバサーニオの結婚
その3、裁判

〈主題の説明〉
*その1、「シャイロックのアントーにオに対する憎しみ」は、
現代人には理解し難いところがある。

これを理解するには、物語の背景となっている、教会による高利貸しの禁止、
について良く知る必要がある。

当時、高利貸しは、クリスチャンなら絶対にやらない、罪と定められている
職業だった。
しかし、ユダヤ人は他にお金を稼ぐ方法が、あまりにも少ない。それ故、必然的に、

・高利貸しを罪と定めるクリスチャン
  VS                   ―という対立が生まれて来た。
・生活のために金貸しをするユダヤ人

お金の貸し借りは、”倫理”の問題であり、「困っている人」を金づるにする
シャイロックは、むさぼりの心がある。そして、彼はアントーニオに、
自分のしていることを蔑まれた時、
むさぼりの罪を悔い改めず、かえってアントーニオを憎むことになる。

これは、罪人の神(救い主)に対する憎しみ、と同じであり、
アントーニオ VS シャイロック ―という対立は、
キリスト    VS ユダヤ人  ―という対立を、
象徴的に表していることになる。

また、アントーニオが、友人(甥)であるバサー二オのために、命を犠牲にしようと
する所も、キリストが、弟子と全人類のために、十字架にかかることの象徴、として
受け取れる。

*その2、「ポーシャとバサー二オの結婚」は、まず、ポーシャという女性が、
教会の象徴であることから、キリストと教会の結婚、を象徴していることが分かる。

二人の結婚は、金・銀・鉛の三つの箱の中から、結婚(当たり)のくじを引く場面
から始まる。
当たりが入っている鉛の箱を選ぶことは、何をその人が真に求めているか、
を問う問題である。

くじを当てたバサーにオは、それからポーシャに自分自身を捧げる誓いをする。

物語の後半、アントーニオからバサーにオ達に移り、最終的に”指輪騒動”で、
バサーにオはアントーニオを離れ、ポーシャにもう一度、自分自身を捧げる誓いを
する。

これは創世記2:24にある
「男はその父母を離れ、妻と結び合い(結婚)、二人は一体となる」
という箇所を、表現するものである。

*その3、「(肉切り)裁判」の話は、”義と認められる”とはどのようなことか。
ということを、直接的に表現している。

シャイロックは証文に書かれたことが、絶対に正しく、自分の義を主張する。
実際、当時の裁判でも、借金のかたに、肉を切り取ることはありえない。
では、シェイクスピアが、有り得ないことを、敢えて裁判の話にしたのは、

自分が正しいと思い込んでいるパリサイ人(律法主義者)
    VS
「私は罪びとです」ろ告白する取税人  ―という二人の比較を表すためです。

罪人が自分の罪を告白し、神がその罪を赦された時、その人は
義と認められるのです。
(ローマ書10章)

〈まとめ〉
以上の点から、「ヴェニスの商人」は、”罪の赦し”と”救い”についての
物語だということが分かります。

-以上です、よろしくお願いしますー