W・D・レイミー著
松田出訳

 


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要素E-E'の並行

E ヨセフの知恵(40:1-42:57)
E'ヨセフの知恵(47:13-26)


ヨセフ物語では、2回にわたってヨセフがエジプトをききんから救って国家的英雄となったストーリーが記述される。比較的片方が長く、もう一方は短いが、両者は並行する。並行関係を示すテーマ語は次のとおり。

  1. ききん」という単語はEのいたるところに現われ、またE’において47:13,20に見られる。

  2. パン はEの41:54-55で2回使われ、E’でも多く使われる。

  3. 「彼はつるす、つるされるだろう」 が40:19,22に現われ、「衰えた が47:13に現われる。両者は完全押韻である。

  4. 穀物を買う/売る」の語幹 が41:56-57と47:14において見られる。

  5. が41:5,22に現われ、「買う」の語幹 が47:19,22,23に現われる。

  6. 町々 が41:48と47:21の両方に見られる。

  7. エジプトの地 または「」がEとE’の両方に非常に多く現われる。E’には「地」 も多くの変化形として現われる。

  8. 語幹 は、「五つに分割する」意味であり、41:34と47:24,26に現われる。

創世記40:1-41:57と47:13-26の間の類似性は明らかであり、共通したテーマ語はその類似性をさらに強めこそすれ、弱めることはない。ヨセフ物語の構造に注意を払うことによって、むやみと話を難解にせずにすむ。たとえばレッドフォードは、創世記47:13-26の「農地改革」はヨセフ物語に継ぎ足されたと考える(“A Study of the Biblical Story of Joseph”, 1970:180)。しかし構造を見れば、創世記47:13-26は、ヨセフがエジプトの英雄として初登場する40:1-41:57のストーリーと対になる必要不可欠な部分であることは一目瞭然だ。

創世記47:13-26の17個の節は、テキストが後代に継ぎ足されたと考える立場の人々からは一般に「J文書」と呼ばれる。彼らは、創世記47:13-26は41:56の後に挿入されるべきなのに誤って現在の場所に入れられたのだ、という仮説を主張する。しかしこの仮説はその他の聖書学者によって強く否定され、事実上は支持されていない。

 
 
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