W・D・レイミー著
松田出訳

 


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折り返し点:要素X

X イスラエルの系図(46:8-27)

ヨセフ物語の折り返し点の位置は、まさにストーリー全体の中心部、創世記46:8-27にあり、ヤコブの系図が紹介される。ここで、前半部と後半部のバランスのしくみを調べる前に全体の構造を詳しく見てみたい。創世記46:8-27がキアスマスの中心であることを確認するためには、前半部と後半部それぞれのクライマックスがどこであるかを特定しなければならない。

前半部の創世記36:1-46:8におけるクライマックスは、42:1-44:34の極度の緊張状態(兄弟たちの出現)を破るヨセフの登場(46:1-7)という箇所にある。ヤコブがエジプトに向けて出発するときに与えられる神の守護の約束(創世記46:1-7)は、前半部で生じた緊張をすべてストーリーの打ち消す「反クライマックス」の機能を持つ。したがってその直後に現われる系図情報は、前半部のストーリーをいったん完結させるための境界線なのだ。

創世記46:28-50:26の主題は、息子たちへのヤコブの祝福である(創世記48-49)。イスラエルの家族がエジプトの地に長く定住してまもなく族長は死ぬ。「わずかな人数しかいないのに、将来はいったいどうなるのか、そもそも将来などあるのだろうか」などの疑問にヤコブの祝福が解決を与え、族長イスラエルのストーリーを完結させ、国としてのイスラエルの将来へと読者の視点を移動させる。

 
 
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