W・D・レイミー著
松田出訳

 


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V. ダビデの王座の確立とサウルの家族への誠実
(第二サムエル記1-8)

サムエル記の5番目の大きなストーリーのまとまりは、サウルの死後ダビデが全イスラエルの王となったことを語る(概略5)。主なテーマは、サウルの家に対するダビデのあわれみといつくしみである。全体は大きく2つの部分に分かれ、それぞれはさらに七つの部分からなるキアスマスだ。最初の部分はユダの上に臨むダビデの王権とサウルの家の者の死の嘆きを語る。次の部分では、ダビデがどのようにして全イスラエルの王となったかを述べ、ダビデが成功して王権を確立するまでを描く。

■概略5 ダビデがイスラエルの王となる(第二サムエル記1-8)

[パート1 ダビデ、ユダの王となる(第二サムエル記1-4)]

A ダビデ、イスラエルの王サウルを殺したと告白した者を殺す(1:1-16)
  B サウルとヨナタンを惜しむダビデの嘆き(1:17-27)
    C ダビデ、ユダの王となりサムエルを葬った人々に謝意を表す(2:1-7)
      X 北と南の対立:ダビデの家栄える:ダビデの息子たち(2:8-3:5)
    C'アブネル、ダビデをイスラエルの王とするがダビデの知らない所で殺される(3:6-27)
  B'アブネルを惜しむダビデの嘆き(3:28-39)
A'ダビデ、サウルの息子イシュ・ボシェテを殺したと告白した者を殺す(4:1-12)

[パート2 ダビデ、全イスラエルに王権を確立する(第二サムエル記5-8)]

A ダビデ、イスラエルの王となる:要約:エルサレム攻略(5:1-16)
  B ペリシテ人に対する勝利(5:17-25)
    C ダビデ、契約の箱をエルサレムに運び、主の前で喜び踊る(6:1-23)
      X ダビデの王国が永遠に立つという約束(7:1-17)
    C'ダビデ、契約の箱の前で主に喜びと感謝の祈りをささげる(7:18-29)
  B'ペリシテ人に対する勝利(8:1-14)
A'ダビデの支配についての要約(8:15-18)

第二サムエル記の始まりは、第一サムエル記の終わりにあたる。サウル王とその後継ぎになるはずだった息子ヨナタンの死のストーリーだ。しかし第一サムエル記31章が実際のできごとを描写しているのに対し、第二サムエル記1:1-16ではアマレク人の報告という形で間接的にそれが語られる。この部分のキアスマスを見てみよう。

■概略5.1 第二サムエル記の構造(第二サムエル記1:1-16)
A ダビデ、アマレク人を打つ(1)
  B ダビデ、アマレク人に問う(2-5)
    C アマレク人、ダビデに答える(6-10)
    C'ダビデと家来、アマレク人に答える(11-12)
  B'ダビデ、アマレク人に再び問う(13-14)
A'ダビデ、アマレク人を打つ(15-16)

第3章の構造は興味深い。アブネルが死ぬ前、死ぬ時、死んだ後のすべてを含むストーリーだ。中心は30節の挿入句である。ここでヨアブがなぜ北王国の指導者を殺す必要があったかという理由が語られる。前半と後半は同じ形のアウトラインを持つ。

■概略5.2 第二サムエル記3:22-39

A ヨアブ、アブネルを殺す(22-27)
  B ダビデ、アブネルの死に責任がないことを宣言する(28)
    C ダビデ、ヨアブをのろう(29)
      X 挿入句(30)
A'ダビデ、アブネルの死をいたむ(31-35)
  B'ダビデがアブネルの死に責任がないことを民が認める(36-37)
    C'ダビデ、アブネルをたたえ、ヨアブをのろう(38-39)

 
序文
サムエルの誕生と支配(第一サムエル記1-7)
サウルの支配・罪・神の拒絶(第一サムエル記8-15)
サウルの王宮におけるダビデ(第一サムエル記16-20)
ダビデの逃亡(第一サムエル記21-31)
ダビデの王座の確立とサウルの家族への誠実(第二サムエル記1-8)
ダビデの罪とその結末(第二サムエル記9-20)
ダビデの最晩年とソロモンの王位継承(第二サムエル記21-第一列王記2)
 
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